vol.034【レポート】中之島プロモーション「中之島15の場所での物語」トーク&リーディング

開催日時:2024年11月20日(水)18:30~19:30 (受付18:00~18:30)
会場:graf porch
定員:40名
登壇者:岡田利規(演劇作家・小説家・演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰)、服部滋樹(graf代表、クリエイティブディレクター)、竹内厚(編集者)
司会:木ノ下智恵子(大阪大学21世紀懐徳堂 准教授)

11月20日、夕焼けが綺麗に見える中之島のgraf porchにて岡田利規氏が書き下ろした「中之島15の場所での物語」トークを開催。岡田氏ご本人によるリーディングもあり、特別な時間となりました。

左:服部滋樹(graf代表、クリエイティブディレクター)、中央:岡田利規(演劇作家・小説家・演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰)、右:竹内厚(編集者)
撮影:仲川あい

クリエイティブアイランド中之島による中之島プロモーションの一つとして、東西に伸びる中之島の回遊散策のポイントとなるべく、15施設のロビー空間などにミーティングポイントと呼ばれるサインスタンドを設置しています。
国内外で活躍するアーティストのディレクションによってコンテンツを繰り広げる本企画は、2018年から演劇作家、演出家、小説家、演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰の岡田利規氏を招聘し、継続的に中之島のリサーチを重ねてきました。そして2024年夏、滞在執筆によって完成した「中之島15の場所での物語」が15施設のサインスタンドに配架されています。

本トークでは岡田利規氏とコラボレーターのgraf代表の服部滋樹氏と編集者の竹内厚氏の3名による対談形式で行われ、まず岡田氏から「今回はテキストを手に取りその場で読むことの面白さがあるものを作りたかった。それはつまり、物語で描写されている景色を目の当たりにできてしまう経験としての読み物です。」というお話からはじまりました。

撮影:仲川あい

岡田氏はこの企画を通して変化していった中之島の印象について「中之島が「島」である当たり前のことを知ることが出来た」との話があり、大阪に長く住んでいる人も意外と認識していないのではないかという服部氏や竹内氏からのコメントがありました。
また、あまり語られていない中之島で過去に起きた天災についても触れているテキストもあり、これを読むことで大阪に住んでいる人や中之島をよく利用する人にとっても、場所を捉え直すきっかけになるのではないかということが話されました。

物語の作り方に関して岡田氏が近年自身の作品制作でも取り入れている能を参考に、旅人(ワキ)が旅先で幽霊(シテ)と出会いフィクションが立ち上がっていくテキストの構造について言及がありました。この要素は今回の物語の中にも多く散りばめられており、直接的ではなくても感じることができるはずです。

さらに服部氏や竹内氏から、岡田氏の滞在執筆の様子に関して「何度も実際の場所に足を運んで制作いただいたおかげで、場の空間性のリアルさがテキストの妄想を行き来する状態が生まれる感覚のあるものができたと思う。」というコメントがありました。

岡田氏によるリーディングの様子  撮影:仲川あい

その後、15の物語の中から、「空き地」(大阪中之島美術館)「書物を読む経験の空間化」(大阪府立中之島図書館)を岡田氏によるリーディングで読みました。物語を手にした人が黙読で読むのとはまた違う、耳から入ってくるテキストの響きがとても心地よいと感じました。

参加者からの質疑応答では、二人称で書かれているテキストに関する質問に対して、岡田氏から「二人称にすることで、テキストに自分を覗かれているように感じたら少しゾワっとすると思うんですよね。そういったことが引き起こせたら面白いし、「いま読んでいるあなたに」という風にテキストを作用させたかったのが理由です。」とのコメントがありました。

最後に司会の木ノ下氏から、次年度はこの15個の物語をさらに別のアーティストが作品化をする構想を計画中との話がありました。

左:木ノ下智恵子(大阪大学21世紀懐徳堂 准教授)  撮影:仲川あい

「中之島15の場所での物語」は施設が開館していれば、いつでも手に取っていただけるように配架されています。ぜひ、中之島に足をお運びいただき過去・現在・未来のリアルと空想が織りなすオリジナルストーリーと実際の場所が融合するイメージの旅をお楽しみください。

レポート執筆:竹宮華美(クリエイティブアイランド中之島事務局 プロジェクト担当)

委託:令和6年度日本博2.0 事業(委託型)
主催:クリエイティブアイランド中之島実行委員会、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催:中之島パビリオンフェスティバル2025