野口里佳(写真家)
被写体との独特の距離感をもった写真作品で知られる写真家・野口里佳が、中之島を徒歩で自転車で船で何度も周遊しながらリサーチし、撮影を行いました。その独自の視点で捉えた写真をもとに、中之島をプロモーションするイメージポスターを制作する「中之島ポスタープロジェクト」を企画。制作したポスターを、2020 年1 月から3 月まで大阪や京都の駅や街なかに点在させ、” もう一つの中之島の姿” を浮かび上がらせました。また、展示企画「ビルダーズ:工事記録にみる都市再考」に展示しました。
写真家・野口里佳によるフィールドリサーチと中之島ポスター制作
<リサーチスケジュール>
2019年
11/11 自転車で中之島を周遊し撮影、ポスターの方向性についてデザイナーと打合せ
11/12 中之島を挟む川の清掃船を船に乗って撮影
11/13 中之島公園を清掃する人を撮影、自転車で中之島を周遊し撮影、中之島のビル屋上から撮影
11/14 自転車で中之島を周遊し撮影


野口里佳ポスタープロジェクト
ポスター掲示期間:
2020年1月−3月
ポスター掲示場所:
アートエリアB1、京阪本線および中之島線の駅、関西を中心とした文化施設等
B0ポスターを、京阪中之島線4駅および、アートエリアB1に掲示。B3 ポスターを、電車内の中吊りポスター枠に掲示。B2 ポスターを、中之島線以外の駅構内および文化施設等に掲示しました。




© 野口里佳
デザイン:倉澤洋輝
駅での展開




成果と課題
展覧会などの発表を前提とせず、まずは中之島という場所を路地の隅々まで周遊することから始まった野口里佳のフィールドリサーチでは、2018 年に続き、徒歩で自転車で船で、早朝から日没まで何度も巡り丹念に撮影の瞬間を探しました。中之島のオフィスで働く人々、中之島公園を掃除する人たち、中之島を挟む2 つの川を掃除する清掃船の人などに着目しながら、見たことのない中之島の美しい一瞬を捉えようとしました。その撮りだめた作品を発表する場所として、展示室での写真作品の展示ではなく、野口にとっても新たな試みとなる「ポスター」という印刷物として街なかに展開するというプロジェクトを展開することとなりました。
ポスターは駅掲示用に、縦位置の写真作品を2 枚組み合わせることで予想もしないイメージが生まれ、整備された公園や高層ビルが立ち並ぶオフィス街のイメージとは異なる、“ 誰も見たことのない中之島” が現れました。
ポスターは鉄道を有する当実行委員会の運営組織の特徴を活かし、中之島および大阪、京都の沿線の駅を中心に展開し、鉄道を利用する不特定多数に向け発信しました。今回は試験的な実施のため比較的範囲を限定した展開とはいえ、掲示期間中に新型コロナウイルスによる社会環境の変化により、その成果の充分な検証ができない状況となってしまいました。また、期間中に実施予定だったリサーチのプロセスについて作家が語る公開トークも延期となりました。次年度以降に新たな形での展開を改めて考えようとしています。
野口里佳|Noguchi Rika
1971年埼玉県生まれ。1994年に日本大学芸術学部写真学科を卒業、12年間のベルリン滞在を経て、2016年より沖縄を拠点に活動。主な個展に、「飛ぶ夢を見た野口里佳」(原美術館、2004)、「光は未来にく」(IZU PHOTO MUSEUM、2011)など。さいたまトリエンナーレ(2016)、第21回シドニー・ビエンナーレ(2018)など、現代美術の国際展にも数多く参加している。『創造の記録』(roshin books、2017)、『夜の星へ』(IZU PHOTO MUSEUM、2016)など作品集も多数刊行。作品は、東京国立近代美術館、国立国際美術館、グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、ポンピドゥセンター(パリ)などに収蔵されている。
http://noguchirika.com/